その急上昇が、あなたの「最高の一日」を奪う。血糖値スパイクの恐怖と対策
ある時期、トレーニング前のルーティンとして、デキストリンやブドウ糖などのカーボドリンクを摂取していました。
目的はもちろん、筋グリコーゲンの補充とパフォーマンスの最大化。
ある日、欲張っていつもよりも糖質濃度を高めたことがありました。
トレーニングを始めようとするタイミングで、突然、身体が鉛のように重く、異常な倦怠感に襲われました。
カフェインも摂っていたのに、目の奥が重く、集中力も皆無。なんならこのまま寝てしまえそう・・・
もちろん「血糖値スパイク」という概念は知っていましたが、体感として理解した初めての体験でした。
そしてこの現象は、何もプレワークアウトだけの話ではありません。
「同じ食事なのに、なぜか太りやすくなった気がする」
「眠気やイライラが以前よりひどくなった」
もしそう感じたことがあるなら、「血糖値スパイク」が関係しているかもしれません。
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急激に上昇・下降する現象のこと。放っておくと、太りやすくなるだけでなく、糖尿病や動脈硬化など、将来的な健康リスクも高めてしまう、まさに“静かな爆弾”です。
今回は、この血糖値スパイクの怖さと、日常でできるシンプルな対策をご紹介します。

■ 血糖値スパイクは、太るより怖い
血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後急激に下がる状態のこと。この乱高下が身体に与えるストレスは非常に大きく、“見えないダメージ”として蓄積されていきます。
問題なのは、エネルギー源として摂った糖質が、逆に自分を動けなくしてしまうこと。実際、私のように「いいはず」と思って摂った糖質が、パフォーマンスの妨げになるケースは少なくありません。
■ 日常の中にも“スパイク”は潜んでいる
以下のような食生活をしていませんか?
これらはすべて、血糖値を一気に跳ね上げてしまう食べ方です。特に、空腹時間が長かった後の「急な糖質摂取」は最も危険。“隠れ血糖値スパイク体質”の人ほど、このパターンに陥りやすいのです。
■ 血糖値スパイクを防ぐ3つの鉄則
ではどうすれば、この“静かな爆弾”を回避できるのか?対策はシンプルです。
① 炭水化物は“質”で選ぶ
白米やパン、うどんなどの精製炭水化物はGI値が高く、血糖値を急激に上げます。これに対して、玄米・オートミール・全粒粉パンなどの未精製炭水化物は、食物繊維やミネラルが豊富で、糖の吸収も緩やかです。
✔ 精製された炭水化物 → 「短時間で吸収 → スパイク」
✔ 未精製の炭水化物 → 「ゆっくり吸収 → 安定」
もちろん、白米やパンを完全にやめる必要はありません。大切なのは「適材適所」で糖質の種類や摂取量を調整し、不要な血糖変動を起こさない設計にすること。減量期でも増量期でも、この考え方は共通です。

② 脂質と食物繊維と一緒に摂る
糖質を脂質や食物繊維と組み合わせることで、消化・吸収スピードを抑え、血糖値の上昇カーブをなだらかにすることができます。
これは「胃排出の遅延」および「小腸での拡散抑制」によって起こる作用で、複数の栄養生理学的研究でも裏付けられています。
✔ 脂質 → 胃の排出を遅らせ、糖の通過を緩やかにする
✔ 食物繊維 → 腸管での糖の移動・吸収を遅らせる
実際の食事例:
・白米にアボカド・卵黄・オクラ・納豆を組み合わせる
・玄米+海藻+ナッツ+野菜スープなど
脂質を恐れすぎず、質の良い脂質と食物繊維をセットにすることが、血糖値安定の近道です。

③ 耐糖能を高めるサプリメントを活用する
糖質を「吸収しすぎない」だけでなく、「取り込む力を高める」ことも同時に重要です。その鍵を握るのがインスリン感受性です。
特に以下の成分は、科学的にも信頼できるデータがあります。
糖代謝を促進するAMPK(AMP-activated protein kinase)を活性化。2型糖尿病治療薬メトホルミンと同等の効果を示す研究もあり、中性脂肪や内臓脂肪の減少にも有効とされています。
ミトコンドリア内でのエネルギー代謝をサポートし、筋肉や肝臓での糖の取り込みを促進。抗酸化作用にも優れており、慢性炎症や老化ストレスにも有用です。
日本では「血糖値対策の機能性表示食品」としても市販されている植物成分。インスリンのように作用し、血中の糖を筋肉や脂肪細胞へと送り込みます。
「サプリはちょっと...」という方は、まずは“バナバ茶”から取り入れてみるのが現実的です。
< 実践者のリアルな体験>
私自身、1日1食で白米をかなりの量まとめて食べるという、血糖コントロール的には“絶対NG”とされるような食生活を、数年単位で継続しています。
ですが、上記の対策を組み合わせてきたことで、最新の血液検査ではHbA1cは5.1。糖尿病の気配どころか、むしろ理想的な数値を維持できています。
大事なのは「糖質を恐れる」ことではなく、“どう付き合うか”を理解し、戦略的に処理する力を身につけること。

■ 糖質は“敵”ではなく“味方”にする
「血糖値スパイクが怖いなら、糖質をカットすればいいのでは?」と思うかもしれません。でもそれは短絡的すぎます。
糖質は筋肉のエネルギー源であり、集中力や判断力にも直結しています。糖質を抜けば、一時的に体重は落ちるかもしれませんが、パフォーマンスやメンタルの低下を招くリスクもあります。
だからこそ、糖質は“敵”にするのではなく、「質」と「タイミング」と「組み合わせ」で味方にすることが大切なのです。
■ 最後に
あの時、欲張って摂ったカーボパウダーで味わった“動けなくなる感覚”は、今でも鮮明に記憶に残っています。
あれ以来、私は糖質の「量」ではなく、「扱い方」に意識を向けるようになりました。結果、食後の倦怠感も消え、トレーニングの集中力も持続するように。
✔ 食べる順番
✔ 食材の選び方
✔ 組み合わせの工夫
この3つを少し意識するだけで、身体のコンディションは間違いなく変わります。
「なんとなく疲れやすい」「太りやすくなった」と感じるなら、まず“血糖値スパイク”という視点で、自分の食事を見直してみてください。
日々の選択が、未来のパフォーマンスを変えていきます。